鼻煙壺の技と美―沖正一郎コレクション―
鼻煙壺とは、粉末状のタバコを吸い込んで楽しむ「嗅ぎたばこ」を入れる小さな容器のことです。アメリカ大陸に起源をもつたばこが、16世紀半ば頃にヨーロッパへ伝わり、17世紀後半頃にはヨーロッパから中国に嗅ぎたばこの習慣が伝えられました。当初、中国でも欧米風の箱型容器が使われていましたが、やがて中国の湿潤な気候に合わせて密封できる蓋つきの小さな壺が嗅ぎたばこ入れとして作られるようになります。そして清朝時代の中国においては皇帝の庇護の下、嗜好をこらした鼻煙壺が数多く生み出され、宮廷人にもてはやされました。
鼻煙壺の素材は、磁器、ガラス、玉、水晶、象牙、金属など多岐にわたっており、精緻な装飾を施した工芸品として中国や欧米に熱心な収集家が多く存在します。日本では沖正一郎氏が世界的な鼻煙壺コレクションを形成しており、そのコレクションの多くが中国北京の故宮博物館、ロンドンのV&A博物館、大阪市立東洋陶磁美術館と世界に名だたる美術館へ寄贈され、注目を集めました。
本展覧会では、沖正一郎氏により長年にわたり蒐集された鼻煙壺コレクション約300点を展示し、手の平にすっぽりと入る、小さな鼻煙壺がもつ多彩な魅力を紹介します。この展覧会が、鑑賞する機会が少ない鼻煙壺の技と美の世界に触れていただく貴重な機会となれば幸いです。
6月14日(火)、7月12日(火)
当館学芸員による作品解説
日時:6月11日(土)13:30~
7月2日(土)13:30~
場所:美術館展示室
※事前申し込み不要、要入館料
〒489-0884愛知県瀬戸市西茨町113-3 瀬戸市文化センター内
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